声優 伊藤 静

何事も、とにかくやってみることが大切。自分の色を持ち続ければ、必ず道は開けるはず。

もともと私は、何かを演じることがとても好きだったんですが、人前に顔を出してお芝居をすることには少なからず抵抗感がありました。ちょっと赤面症気味なところがあったことや、自分はずっと演劇をやってきたわけではないというのがその理由です。しかしそんな時、たまたま見たアニメから、声だけでお芝居をする声優という職業を知って大きな興味を持ちました。

そして、とりあえずやってみよう、合う合わないは後で判断すればいいという気持ちで挑戦してみたんです。東京アナウンスアカデミー(当時)に入学した後、講師の先生に勧められてスクールデュオに3期生として入学。

声優としての歩みを少しずつスタートさせました。実際にこの仕事をはじめてみると、自分の世界が一気に広がるような感じがしてすごく楽しい。いつの間にかこの世界から離れられなくなっていたという感じですね。


東京アナウンスアカデミーでは多くのことを学びました。そのなかでも、作品に入っていくためのノウハウは大いに役立っていると思います。私のいたクラスには、雰囲気や空気やイメージを大切にする先生方が多くて、いま思い返すとそれが私にはすごく合っていました。作品や役と向き合うときに、時間をかけて世界観やイメージを広げていくクセをつけることができましたね。声優という仕事の一番の特長は、「自分」の視点と演じている「役」の視点の双方から物事を見られることではないでしょうか。いろいろな役を演じるたびにふたつの視点からものを考えられるというのは、この職業が持つ大きな魅力だと思いますよ。


仕事をする上でふだんから心がけていることは、作品に携わっているたくさんの方々に迷惑をかけないように、そして何より自分自身が楽しめるように健康に気を遣うことですね。ひとつの作品を作り上げるためには、多くの人々が協力する必要があるんです。だから、いろんな方々が求める芝居ができたときは、人に喜んでもらいたい性分も重なり、「ヨシッ!!」と思いますね。


その一方で、どんな内容の仕事に対しても「自分」を持ち続けることも大切です。誰かに言われたことに振り回されるのではなく、いま自分が信じている「自分」を大事にできるかどうかが重要。個性というものは人それぞれに色が異なります。私自身も本当はどれが自分の色なのかよくわかっていないのですが(笑)、でも時には頑固に貫き通して、時には柔軟に対応するということを繰り返しながら、少しずつ「自分」の幅を広げていければいいなと思っています。


今は、アニメや洋画の吹き替え、ラジオ、歌など、いろいろなジャンルの仕事をやらせていただいています。声優業界はとても厳しい世界ですが、この世界で生きていくためには、秘訣というほどのことではありませんが、何事もまずはやってみることだなと実感しています。もうひとつは、時間がかかってもあきらめないこと。あきらめずに前に向かい続ければ、いつか必ず道は開けると思います。


時には迷ったり悩んだりして立ち止まってみることも必要かもしれません。いろいろなものを自分の目で見て、それを自分の中に吸収して、たくさんストックして、また一歩を踏み出すということをずーっと繰り返してください。そして、自分だけの武器になるような世界を作りながら、少しずつ少しずつ進んでもらえればいいと思います。